お酒を楽しむ
燗酒のすすめ
世界中にはお酒を温めて飲む文化が多数あります。ホットウイスキー、アイリッシュコーヒー、ホットイタリアン等がそれです。これらはほぼ全てお湯やミルク等で割ってつくる物がほとんどです。
これに対して日本酒には唯一その物を温めて=燗をつけて飲む文化があります。
今でこそ燗酒と言えば「冬の飲み物」という印象がありますがその昔、江戸の庶民の間では一年を通して日本酒を燗につけて飲む習慣もあった様です。
冷やで飲む日本酒ももちろん美味しいのですが、味に幅があり少し辛めの日本酒を熱燗で飲んだときの舌と咽に滲みる感じは本当に心地よいものです。
また、燗をつけるとともにあぶった魚のヒレを入れる「ヒレ酒」や燗酒をズワイガニなどの甲羅に注いで飲む「甲羅酒」は日本酒の旨味を劇的に倍増させる飲み方です。
まだまだ寒い日が続きますので、いつものお酒に燗をつけてガラリと変わるその美味しさを楽しんでみてはいかがでしょうか?
燗をつけるとどうなるの?
まず、日本酒を温めるとアルコールを始め、その他の揮発成分の蒸発速度が上がります。蒸発し たこれらの気体は私たちの鼻や咽に刺激物として感じられるでしょう。燗酒の良い香りと裏腹についついやってしまうのが、飲む瞬間に「ゴホッ、ゴホッ」とむ せて咳き込むこと。「これがあるから私は燗酒がキライ」という人もいます。燗酒を飲むときは十分気を付けましょう。
次に、日本酒を構成す る味や香りの感じ方が変わってきます。日本酒に含まれるアミノ酸や香りの成分は数十種類あると言われていますが、これらはそれぞれ際立つ温度帯が異なって きます。そして概ね全ての成分は温めることにより鼻や舌に感じやすくなります。つまり常温では分からなかった味や香りが燗をつけて温度帯が変わったことに よって目立って来るということです。
また、このことは言い換えると、冷やした日本酒は味や香りを隠しがちということになります。冷やした日本酒は刺激が少なく、とても飲みやすいのでついついペースが早くなりがちです。気付いた頃には予想以上にアルコールが廻っていて泥酔したり、二日酔いに なったりします。「親の説教と冷酒はあとから効いて来る」とはよく言ったものです。
お燗のつけかた
昔の人が時間と手間をかけて苦労してやっていたことが、今では素早く簡単にできる様になりました。(私も含めて)今多くの方は出来るだけ日常の「一手間」を省いて少しでも自分の時間をつくる様に努力していると思います。
お酒に燗をつけるとなると、まずヤカンやお鍋に湯を沸かして、そこへお銚子を沈めて・・・と、何かと面倒な作業と思われがちですが、以外と簡単に出来る方法もあるのです。
もっとも簡単な方法はマグカップに入れて電子レンジの「お燗」を選ぶ方法。温め時間さえ上手く調節すればちょうど良く燗をつけることが出来ます。ただ、この方法の難点としては燗酒を飲む風情が無いこと、カップの口が広すぎるためお酒の香りが飛んでしまいやすいことです。
次に、もっとも簡単で風味を損ねずに燗をつける方法としてお銚子を2本使う方法があります。一本のお銚子にお酒を入れ、もう一本には等量の水を入れます。この2本を電子レンジで温めた後、お湯(水)の方を捨てます。さらにお酒の方を先ほどお湯が入っていた方のお銚子に移し替えます。これで上下の温度ムラも無く、風味を保ったお燗酒が出来上がります。
また、一合のお銚子なら熱湯に5分沈めておくだけでも十分温まります。家庭にあるもので万流のお燗を楽しむことが出来ると思います。
因に昔から蔵人の晩酌はというと・・・一升瓶を豪快にドボドボとヤカンに移し、そのままガスコンロで温めます。
燗酒を楽しむ
お燗の温度によってその呼び方が沢山あることをご存知でしょうか?
「あつ燗」や「「ぬる燗」などは聞いたことがあると思いますが、実は日本酒の温度表現は次の様になっています。
飛び切り燗 | 55度前後 | あつ燗 | 50度前後 |
---|---|---|---|
上燗 | 45度前後 | ぬる燗 | 40度前後 |
人肌燗 | 37度前後 | ひなた燗 | 33度前後 |
冷や | 常温 | すず冷え | 15度前後 |
花冷え | 10度前後 | 雪冷え | 5度前後 |
居酒屋などで日本酒を「冷や」で注文すると、今は冷蔵庫で冷やしたものが出て来ることがほとんどです。これは品質管理の観点から冷蔵庫に入れざるを得ないのですが、本来「冷や」とは常温のことでその時の季節や室温によっても変わってきます。
日本人はお酒を美味しく飲むためにこれだけ細かく温度にこだわってきたということです。しかもどれも粋な呼び方ですね。
好きなお酒をより美味しく飲むために、または寒い冬を楽しむために、いつもより少しだけ時間と労力とお金をかけて、いつもよりこだわった飲み方をおすすめします。
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