雪っこ

これからの酔仙酒造

大船渡蔵に移り一年を迎えた酔仙酒造。

今年の雪っこ、そして今後の酔仙酒造について、金野靖彦社長と製造部の金野泰明氏にお話を伺いました。

今期のお酒造りが始まりましたね。今期にかける想い、ビジョンについてお聞かせください。

金野靖彦社長 お酒に対して、どのような想いを込めて造っていくかという全体的な部分をこれからしっかりと作り出して、そして掲げていかないといけないなと思ってます。
それから、去年、この蔵で全てがスタートしたわけですが、きっと酵母も麹も住み着いてくれた、今年もまた来年も、家賃も敷金も礼金もいらないから、いい酵母といい麹に住み込んでいただきたいなと思っています。

雪っこの仕込みがつい先日始まりましたが、今年の雪っこはどのような出来になりそうですか。

金野泰明氏 去年一年造って蔵の癖がわかってきたので、ある程度安心して作れるし、落ち着いた気持ちで造れれば、それだけいい雪っこができると思います。お米については、去年と同じようなちょっと溶けにくい、硬い米になる可能性はありますが、すっきりした軽快な酒質になると思っています。

今年の雪っこを、どんな人に飲んでいただきたいと思いますか。

金野泰明氏 やっぱりまず、地元の人、気仙の人。それから、千厩時代の雪っこと、去年の雪っこを飲んだ人。新しい二年目の雪っこと比べるつもりで飲んでもらいたいですね。

金野社長 あとは新しい人。飲んだことのない人に、飲んでいただきたい。

慣れてきた新工場で造られた、今年の雪っこ
慣れてきた新工場で造られた、今年の雪っこ

大船渡蔵も今年から二期目に入ります。一年間の新工場でのお酒造りを振り返ってみての苦労などを教えてください。

金野泰明氏 少ない時間の中で、計算して設計して出来上がった蔵を一年間使ってみて、その計算通りに行かなかったことや不具合がたくさんありました。ですが、昨年一年間は、新しい工場がきちんとこういう形として出来たことそれ自体がものすごい大きな意味を持っているので、苦労ともなんとも思いません。

去年までやらなかったとことや、今年新たにチャレンジしていこうと考えていることをお聞かせください。

金野泰明氏 新商品については、お酒の性質上一年熟成させる必要があったので、この秋から出る、主に吟醸酒関係ですね。
それから、今期新しく造る清酒にも新しいジャンルの商品があって、微発泡清酒と、雪っことはまた違ったにごり酒。今期はその二種類でチャレンジをします。

微発泡酒出るんですね、今、人気があるので、このインタビューを見た方は楽しみに思うかもしれません。

金野泰明氏 レシピが流されてしまっていて、造るために必要な情報が不十分なところもあるのですが、とにかく今期は、造って販売すると言うよりも、もう一度その商品を安定して造れるようにするということを目標にします。

新工場で新しいチャレンジもしていくということですが、ずっと守り続けていきたいことというのはどういうことになりますか。

金野社長 日本酒としての継承・伝承っていう部分はもう一回見直す必要があると思います。それから、この商品がどういう商品なのかといったことをもう一回みんなで話し合って確認する作業をしていかなければ、たくさんある商品の中で、それぞれがそれぞれに埋もれてしまうと思います。
わたしどものお酒は、辛口ですねと言う方と、甘口ですねと言う方がいらっしゃいます。それくらい味を持っているので、それはそれでいいと思います。ただ、その辛口っていうのを、辛口で一括りにしてしまうことがあります。例えば濃醇の辛口もあるし淡麗の辛口もあるわけですから、そこをよく知らないと明確な説明ができません。当初は、例えば「岩手の地酒」という商品は酸度が何度以上なければならないなど、そういうことが(レシピによって)明確にされてきた部分もありました。これからはそういうのをより明確にしていきたいと思っています。そして、最終的には想いをどのくらい入れていくかを大事にしていきます。

酔仙のお酒の味、全体の酔仙のお酒として目指しているものというのは、昔から変わっていませんよね。

金野社長 基本的には変わっていないと思います。ただ、例えば純米酒は純米酒としてこういうイメージを持っています、本醸造は本醸造としてこういうイメージを持っています、というイメージのものを作り上げながら、本醸造は本醸造、純米酒は純米酒として、とにかく一口飲んで、あぁおいしい、としみじみ思えるようなお酒がいいのではないかと思っています。わたしの感覚では、これが以前の「上撰『酔仙』」で出来つつあったのかなというような気がしています。

震災直後からのこのインタビューも三回目になりますが、今後の復興計画と目標について伺わせてください。

金野社長 よく「八割ぐらいまで復興した」とか「七割ぐらいまで復興した」と言うのですけども、被災前の状態までいかないのであれば、やっぱり「復旧」かな、インフラや住居など色々なものが被災前のように定常的になって初めて「復興」になるのだろうなと思っています。
ただ、清酒は伝統産業ですから継承・伝承はもちろんしていかないといけませんが、そろそろ新しい風を吹き込んでいかないと廃れてしまうだろうと思うんです。それから、今、リキュールや蒸留酒などの酒類免許10種類ほど持っていますが、とてもとても活かせない。新しい風のため、また、免許を活かすために、本社を兼ねた建屋とかそういうものを建ててーーそこまでしなければならないと思っています。
そして、市民や被災者の生活で言えば、復興というのは前に戻ったとか、町並みが出来た、家も出来たという上に、さらに生け花をやったり絵を描いたり旅行に行ったりなど、いわゆる文化というものまで行えるようになって、初めて復興と言えるのだろうと思っています。そして、それは会社も同じだと思います。やっぱり、地元の人と一緒に歩んでいくところまでやれるようになって、復興なのかなと思いますね。

今、新工場を建てて、ある程度生産量が戻ってきたというのは「復旧」。これからチャレンジできるようなものが出来たりして、地元の人と一緒に会社の文化を作っていって、という余裕ができて初めて「復興」と言えるということですね。

金野社長 今まで二年半、復興を「ご支援」いただいてきました。これから先は、例えば「感謝」という年を挟んで、その上で通常の情報発信なり日常の活動に移っていくというのが、今まで恩を受けた者のやるべきことだと考えています。
ここにトヨタ自動車の社長さんがいらして、(大変お世話になったのはこちらなのに)「感謝」という色紙を残していかれました。逆ですよね。なぜ「感謝」というのを残していったのか、よくよく考えてみる必要があると思っています。
実際にはすこし違うかもしれませんが、たぶん、いつもお客様の目線でいるからそのような言葉、色紙になったのだと思います。農業がなければ工業はなりたたない、自動車は売れない、という考え方を持って、トヨタの社長さんは田植えをしたり稲刈りをしたりしているわけですよね。しっかりした考え方が残っている会社であって、いつもお客様目線なのだろうと、わたしは思っています。

今年も雪っこの発売を待っているファンの皆さんに、発売に向けたメッセージをお願いします。

金野社長 ここまでくることができたのは皆様のものすごいご支援のおかげなのですが、縁にも運にも恵まれた、最終的には、水にも恵まれました。やっぱり、心を込めて造ったお酒、雪っこをぜひまた今年も味わってください。

最後に皆様にお伝えしたいことがあればお願いします。

金野社長 今はまだ復興途中ですから、忘れない、時々目を向けていただく、心を寄せてもらうというのが、最大の元気のもとです。実際に見てもらえていない方は目にしてもらいたいと思いますし、観光物産協会でも語り部さんを教育しておりますし、とにかく目にしてもらえるといいなと。
妻の後輩が修学旅行でここに来て、「被災地には黒い袋に入ったごみ袋がいっぱい並んでいた」という感想文を書いて、何だか意味分からなかったのですが、土嚢だったんですね(笑)。そういうのでいいので、とにかく見てもらえればいいなと思います。

2012年 雪っこ出荷についてのインタビューはこちら>>

2011年 雪っこ出荷についてのインタビューはこちら>>

雪っこについて

活性原酒・雪っこ

  • 活性原酒・雪っこ_01

冬期限定の白いお酒

とろりとした口当たりの白い活性原酒です(活性原酒とは酵母や酵素が生きたままの原酒です)。
冬期限定酒で毎年10月から3月末頃までの発売になります。

『雪っこを楽しむ簡単レシピページ』はこちら
『雪っこ50周年特設ページ』はこちら

商品名 活性原酒・雪っこ
アルコール度数 20度
容量/希望小売価格 180ml・330円(税込) 300ml・550円(税込) 720ml・1,320円(税込) 900ml・1,375円(税込) 1800ml・2,585円(税込)
販売期間 10月〜翌年3月末頃まで
  • 【精米歩合】70%
  • 【使用米】岩手県産米
  • 【使用酵母】協会9号
  • 【日本酒度】-13.0
  • 【酸度】1.3
  • 【特徴】甘口

雪っこ誕生物語

1965年、当時流行の兆しを見せ始めた活性酒。しかし当時の活性酒は、アルコール発酵に必要な米粒も十分に含まれている為、加熱殺菌せずに瓶詰めすると、二次発酵によって炭酸ガスが大量に発生し、栓が飛んだり、噴き出して手が汚れたりと、扱いづらいところがありました。それらの問題を解決しようと挑み、幾多の壁を乗り越え、出来上がったのが「雪っこ」です。

酵母や酵素は生きている生のお酒ですが、醗酵は休止している状態です。これにより、噴出してお客様の手を汚す事はなくなりました。こうして苦労して出来上がった商品ですが、ネーミングがなかなか決りません。ある日、ネーミングをどうしようかと、会議を開いているときです。なかなかいいアイディアが出てこず皆頭を悩ませていた、その時。外を見てみると、雪がチラホラ、ちらつき始めたのです。

「あっ、雪っこ降ってきた!」と誰かが発したこの言葉。この地方では、固有名詞の後に「○○っこ」とつける方言があります。

「それが、いいね」という話になり、ネーミングは「雪っこ」に決定しました。

こうして生まれた雪っこは、昭和45年の発売以来、長年愛され続けています。今では発売する秋になると「雪っこは、発売されましたか?」というお問い合わせを全国から頂戴するまでになりました。

10月から4月までの季節限定です。この季節にしか味わえない、とろりとした呑みやすい口当りとほんのりとした酔い心地をお楽しみ下さい。

雪っこのおいしい飲み方

  • ※こちらの動画は震災前に作成されたものです。映像で紹介される蔵や事務所は現在のものとは異なります。

雪っこを飲んだ感想、おいしい飲み方募集中!

ハッシュタグ #iwatesuisen をつけて、おすすめの飲み方や感想をツイートしてください! みんなで雪っこをおいしく飲もう!

販売方法について

なお、個人のお客様はでご購入を希望される方は、お近くの酒販店様へお問い合わせいただくか、弊社オンラインショップからご購入いただきますようお願いいたします。

また、お取り扱いを希望される酒販店様・飲食店様はお手数ですが、弊社販売課(TEL:0192-47-4130)へご連絡ください。

飲酒は20歳を過ぎてから。飲酒運転は法律で禁止されています。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。お酒はなによりも適量です。飲んだあとはリサイクル。