蔵人便り

SINAPによる復興レポート -世嬉の一酒造-

11月25日 例年にくらべ冷え込みの厳しい1日であった。首都圏でも厳しい寒さを感じるのだから、酔仙の工場がある岩手県はいうまでもない。
岩手県一関市千厩町で操業を続ける酔仙酒造。岩手内陸に位置する千厩町は、海岸沿いの陸前高田に比べるといっそう冷えるということだ。
今回の訪問では、私たちも事務所の外で作業を行うことがあったのだ、10分もいれば体は冷えきってしまい、それ以上は外にいることができないと感じる程だった。
この寒さのなか職人の方や工場で働く方は、暖房もない設備の中で作業を行うのだから、相当厳しい環境であることは間違いない。がまん強く黙々と作業する方達を素直に尊敬する。

さて、この一関市千厩町の工場は、玉の春・千厩営業所の一部を岩手銘醸株式会社様から一時的に提供頂き操業を行っているが、元は横屋酒造(銘酒「玉の春」の先の醸造元)の由緒ある蔵であった。今回の訪問でその横屋酒造の親戚にあたるという、「世嬉の一酒造」を訪れたのでそのお話をしたいと思う。

 

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「世嬉の一酒造」は一関駅から歩いて10分程の場所に位置する江戸時代から続く由緒ある蔵元だ。現在工場自体は他の場所に移転しているが、大正時代に建てられた、精米所、醸造蔵、製品倉庫などはそのまま残っており、その素晴らしい建築は国の有形文化財にも指定されている。
この建築を設計したのは、東京駅の設計者である辰野金吾氏に師事した小原友輔氏である。なるほど、元精米所の石造りの蔵は東京駅のおもかげを感じ取れる荘厳なつくりである。

歴史的に非常に価値があり素晴らしい建築であるこの蔵も、東日本大震災の被害を受けていた。石造りの元精米所は建物真ん中に亀裂がはしり、ぱっくりと2つにわかれてしまいその亀裂から中が覗ける程であったという。現在は応急処置がおこなわれ、亀裂は埋められているものの元の強度を取り戻すには大規模な改修工事が必要だということだ。
また、土蔵造りの元製品倉庫は、壁に亀裂が入り、部分的に崩れ落ちてしまった所もあるという。さらには、蔵の扉の片方は傾き、いつはずれてもおかしくない状態となってしまい、現在は撤去されている。亀裂が入ったり崩れた部分には白いベニヤ板がはられて応急処置がおこなわれているが、改修工事が必要なのは前述の精米所と同様の状況だ。

今回の震災ではその被害の大きさから、海岸線の地域が大きく報道されているが、実は内陸部にも震災の影響は確実に見て取れる。話を聞くと、3月11日の地震の被害だけではなく、4月11日におきた大きな余震でも内陸部は被害をうけたという。
もちろん、まずは今でも避難生活を送っている海岸線の地域を優先して復興させるべきであろうが、内陸部の復興も今後は必要なのだなと感じた。
 

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まだまだ完全な復興には遠いが、蔵の設備を使いレストラン・喫茶店・ビール工場等が営業されている。こちらで作られる地ビールは、日本で初めてモンドセレクションのビール部門の賞をとった素晴らしいものだ。さらにレストランでは一関名物のお餅御前を頂くことができる。いろいろな味付けがされた色とりどりのつきたてのお餅は非常に美味しいかった。
また、元醸造蔵はお酒造りの博物館となり、昔ながらの酒造りの方法が展示されていて非常に興味深いものだった。実はその酒造りの方法は、今酔仙酒造が玉の春工場で行なっているもの似ていて、あらためて酔仙酒造がお酒造りの原点に返っていることを感じることができた。

一関駅から歩いて10分の「世嬉の一酒造」では、素晴らしい建築に触れ、美味しいものが食べれて、さらにはお酒造りの歴史を見ることもできる。本当に素晴らしい施設だ。世界遺産に登録された平泉に行くには一関駅を利用することになるので、みなさんも是非寄ってみてはいかがだろうか。

 

※世嬉の一酒造の詳しい情報は世嬉の一酒造公式サイトをご覧下さい。
 

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