蔵人便り

お酒と神様

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お酒は神様とのコミュニケーション手段

「酒に酔う」とはアルコールが血中にまわることで意識が昂揚し、平常時とは異なる精神状態になることを指します。このような酒の作用や、腐敗を抑制する酒精の特徴から、古代の人々はお酒を「不思議な飲み物」と捉えていたことでしょう。日本においても私たちの祖先はこの不思議な飲み物である「お酒」を「清らかなもの」、「神様の領域に近付けるもの」と捉えていたようです。大和時代(538年)には日本に仏教が伝来しますが、それ以前より神様にお願いをし、教えを聞く「神事」が暮らしの中に浸透し、その場面には必ず「御神酒」が存在しました。
 神様とのコミュニケーションである神事。この神事を構成する行事の最後には必ず直会(なおらい)があり、神様に捧げた「御神酒」と「神饌(しんせん)」を参加者一同で頂きます。神様が召し上がったものを人間が食べることによりその霊力を分けて頂くのです。神職者によって執り行われていた「祀り」はやがて大衆に浸透する「祭り」に派生して行く訳ですが、民衆の楽しみ事であった「祭り」においては「直会」の意味も拡大され今に至っています。現代では「祭り」と言えば楽しみな行事であってレジャー的な要素が強く思われます。特に酒好きの大人にとっては沢山お酒を飲める口実の様に思う人もいるかもしれません。でもその成り立ちに想いを巡らせ、神様と言う名の自然に寄り添い、約束をし、御霊を鎮めてきた私たち日本人の凛とした生き方を時々確認する作業は大切だと思います。

「お酒造りは神事そのもの。」

神職者による「祈祷」のほか「流鏑馬(やぶさめ)」、「神楽」、実は「大相撲」なども神事の一種であることをご存知でしょうか。神楽は神様に奉納する舞として、流鏑馬や大相撲は神意を伺うための間接的な手段として行われたのが発祥だそうです。
ところで、神様と深い関係にある清酒ですが、この清酒を造ること自体が昔の日本では神事として行われてきたそうです。そして、酒造りの神様として大山咋神(おおやまくいのかみ)を祭っている松尾大社、酒解神(さけとけのかみ)、酒解子(さけとけのみこ)を主神とした梅宮大社、大物主神(おおものぬしのおおかみ)を祭る大和国一之宮三輪明神大神神社などが挙げられます。
 神事としての酒造りは収穫の季節、五穀豊穣を祝いその年にとれた米を原料とし酒を醸します。各工程に専用の祠(ほこら)が用意され、行程ごとに担当者が祝詞を奏上し分担して執り行っていたそうです。醸造という目的の他に儀式としての意味合いが強かった酒造りは自然への敬意を示して行う神事。それ故酒造りの現場も昔から蔵人たちの研ぎすまされた真剣な空気と感覚が満ちていたのでしょう。

「酔仙と神様」

清酒の製造と販売を業態とする弊社ですが、やはりお酒と神様の結びつきについて、昔から深く意識しその文化を大切にしてきました。そしてこのことは取り立てて大げさに言うのではなく、むしろ当たり前のこととして捉え、これからも続けていければ良いと思っています。

酔仙は他の多くの酒造会社が崇めております様に松尾の大社さんを祭って酒造りを行ってきました。
まず、お酒の監評会で上位入賞した場合は社長と杜氏以下順番に2〜3人ずつ京都の大社さんにお参りし、結果を報告し、気持ちを新たにして酒造りに励んでもらいました。
松尾の大社さんの神棚は酒母室に祀り上げ、蔵人は朝夕必ずお参りを欠かしませんでした。もちろん仕事始めの日は全員で、大社さんと、工場内におわすお稲荷さんを参拝してきました。

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弊社の活性原酒雪っこは発売以来47年目になりますが、10月1日の日本酒の日に合わせて初出荷を行ってきました。陸前高田には延喜式内にも出て来る氷上神社さんがおわし、大社さんも一緒に祀られております。このことから、大社さんには式場に安置して頂き、ここの神主さんに新しい杉玉の掲揚式と今年も酒造りができた感謝と、雪っこを満載にして出荷していくトラックの交通安全を祈ってきました。
他に鎌倉の鶴岡八幡宮さん、靖国神社さん、日枝神社さん、明治神宮さん、神戸の湊川神社さんなどなど、例祭の折にはお酒や飾り樽を寄贈し世の中の安泰と会社の隆昌、更には良酒向上を願ってきました。

日本人の暮らしの中には必ず八百万の神様がいました。その間にお酒があって人と神様のコミュニケーションを取り持ってきた訳です。古代から神様という形で自然を受け入れ、寄り添い、時々我慢をしながら暮らしてきた日本の心は今でもしっかりと根付いていますが、現代のめまぐるしい社会の中では今後確実に薄らいでいくでしょう。昔から神様の側で商売をしてきた私たちですが、これからも文化としての酒造りを続けていきます。これからも日本人が日本人らしい心を持っていられるよう、少しでもその力になれますように・・・。

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