蔵人便り

SINAPによる復興レポート -厳冬期のお酒造り-

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2012年2月03日 節分。暦の上では冬最後の日。翌日から春が始まるこの日、日本を襲った大寒波の影響で東北地方は大雪に見舞われていた。
避難所から仮設住宅への移動がおわり、避難所で生活してる被災者の方はいないものの、この寒さと大雪が慣れない仮設住宅の生活に与える影響は大きいはずだ。

東京でも雪が積もる程のこの寒波。酔仙酒造玉の春工場がある岩手県一関市も例外ではない。新幹線の一関駅を降りた瞬間に目に入ってきたのは雪で覆われた白い町並みだった。
東京で日々を過ごす私にとって、雪に覆われた街は新鮮ではあるが、ここで生活をしている方の雪との格闘を想うとそんなことはいってられない。

酔仙酒造玉の春工場は内陸にあたる一関市千厩町にあり、やはり海沿いの陸前高田にくらべると冷え込みは厳しい。さらに空調施設の無い蔵でのお酒造りに蔵人達は苦労していた。

 

■水は凍る


当然のことながら、水は氷点下の気温では凍ってしまう。酒造りの現場に水は必ず必要なのは当たり前の事で、気をつけてはいても仕込みの時に蔵の床は水に濡れてしまう。濡れてしまった床は時間が経てば必ず凍ってしまうので、現場の床が凍結してしまう。
凍結した床での重労働は慣れていないと想わぬ怪我をしてしまう原因にもなりかなり危険だ。


■配管も凍る


水が凍ってしまうのは、目に見えるところだけでは無い。当然、蔵や瓶詰め工場の配管の中の水も凍ってしまう。断熱材を使って配管を保護しているものの、それでも工場の外を通る配管は凍ってしまう。
この時期の朝一番の蔵人の仕事はこの氷を溶かす事から始まる。お湯やドライヤーを使って凍った部分を溶かしていく。それでも解けないものは配管を一度切断して、直接氷を溶かさなくてはいけない。
この地味な作業を一つ一つ寒空の下で繰り返すのは想像するだけでも辛い。さらに、仕込みの開始までには溶かさなくてはいけないので、当然通常より早くから作業に入らなくてはいけないというのも大変だ。

特にボイラーの配管は一番厄介な問題である。ボイラーでお湯を沸かす場合、通常は常にあたらしい水が供給される。しかし配管が凍結してしまうとその水の供給が途絶えてしまうため、ボイラーは空焚き状態になってしまい、非常に危険だ。
蒸気圧制御系統の配管が凍ったこともあり、その場合圧力ゲージがレッドゾーンに振り切れてもひたすら燃焼し続けるという危険な状態に陥るそうだ。

こうした事態を受けて酔仙酒造では酒の仕込みを1月13日より一旦中止し、寒さ対策を行なったのち再開することになった。
さすがにこのまま仕込みを続けるのは蔵人への負担が大きく、危険であると判断したためだ。
現在は寒さ対策も完了し2月10日より再び仕込みを始めている。

夏の暑さとの戦いも壮絶だが、厳冬期のお酒造りはこうも苦労が多いものなのかと思う。
忘れてはならないのは、蔵人にとってもこれは初めての経験であり、未知の問題に毎日さらされているということだ。
すっかり便利な生活に慣れてしまった私などは、話を聞くだけでも逃げ出したくなるが、酔仙の蔵人達はたくましくその寒さに立ち向かっている。
 

この記事へのコメント

昨年の震災お見舞い申し上げます。先日実家の両親より大船渡に工場が再建されるとの事でしたが、色々問題もおありかと思いますが、なぜ陸前高田じゃないんだと残念な気持ちでいっぱいでなりません。毎年帰省していても遠き故郷を思い出してくれたのはこちらで手に入れたお酒の酔仙の文字、住所陸前高田の文字でした。遥々ここまで来たんかと話しかけたりもし、陸前高田を近く感じた瞬間でもありました。一中での授業中、どこからともなく薫る米蒸す香り、小学校の遠足で見学させて頂いたり、中学では美術の時間に写生したりと想い出は沢山あります。今は無理でも、いつか必ず陸前高田に還って来て下さい。住所から陸前高田の文字をどうか消さないで下さい。何卒宜しくお願い致します。何かと大変とは思いますが頑張って下さい。陰ながら応援しております。また美味しい郷土の酒、酔仙楽しみにしてます。

【投稿】村上

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